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【炎樹×明里】

 

「あ〜…………。」

顎を椅子の背もたれに乗せてだらーっとしている要に鈴原が近づいた。

「炎樹、だらけすぎよ。最近特に様子がおかしいけど、何かあったの?」

「あー、俺病気なんだわ。」

「何ですって!?どうして早く言わないの!」

何も聞かされていなかったし、まさか病気にかかっているなどとは微塵も考えなかった。

今までどんなにきついスケジュールでも風邪も引かなかったのに。

だから大丈夫だと思っていた。

炎樹の体調管理を自分以上にできる人なんてきっといないと思っていた。

そんな慢心が観察眼を曇らせていたのだろうか。

「それでどんな病気なの?重いの!?」

 

「明里中毒。」

 

「………………。」

 

バコッ!

「いってぇぇぇ!何すんだよ!」

真面目な顔で呟いた炎樹に、心配した自分がバカだと思った。

 

 

 

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【炎樹×明里&】

 

どうしても要さんの傍で産みたくて、帰国してもいいと言われたけれど、アメリカで子どもを産んだ。

だからこれが初めての顔合わせになる。

 

「ただいまー。親父、お袋、帰って来たぜ。」

「こんにちは。」

二人から三人に増えて。久しぶりに来た要さんの実家。

ドタドタドタッという音と共に奥から3人が出てきた。

「きゃあー!明里さんひっさしぶりー!わあー、この子が私の甥っ子かあ〜。」

「明里さん久しぶりね。出産お疲れ様。今日はゆっくりしていってね。」

「明里さん、こんな可愛い孫をありがとうな。さ、どうぞ上がってくれ。」

「本当にお久しぶりです。」

「…………おい。」

「うっわあ〜。かわいいー!抱っこさせて?」

「ほんとかわいいわねぇ。」

「昔を思い出すなあ。」

 

「……おい!久々に帰ってきた俺にもなんかねぇのかよ!」

 

「え。あ、お兄ちゃんいたの。」

私たちの息子を抱いてキラキラした目で見つめていた妹さん。

「あら、あんた仕事じゃなかったの?」

人差し指を息子に握られているお義母さん。

「おお、手の形が明里さんそっくりだな。」

初孫にメロメロになっているお義父さん。

 

「あ、そーだ!お母さんあれあれ。」

「ああ、明里さん。この子におもちゃとか服とか買っておいたのよ。見ていってくださる?」

「おお、そうだそうだ。居間に置いてあるから、さあ上がって上がって。」

「あ、はい。ありがとうございます。お邪魔します…。ってあの、要さんは…!要さーん…」

 

 

「俺…帰ろっかな……。」

要は玄関に立ち尽くしながら、靴すら脱いでいない自分がどうしようもなく虚しかった。

 

(4つ下のミニネタ続編。ますます虐げられる綾織家息子・要の不幸な話。)

 

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【炎樹→←明里】

 

もともと彼女は、自分ばかりを指名していたわけではない。

むしろ永久指名をしてくれと頼むまで、それほど指名されたことはなかったと言ってもいいかもしれない。

彼女を永久指名客に選んだのはただ仕事の上で都合がよかったからだ。

彼女を恋人にしたのはただ理沙に諦めさせるためだ。

そのはずなのに。

 

この間まで俺はどうしていた?

彼女が店に来ない日。

彼女が店に入ってから席に着くまで。

彼女が座って俺を見ている間。

今までに感じたことのない不思議な感情が支配する。

 

テーブルを後にした彼女を想う。

扉を一歩出れば、もう自分と彼女の繋がりはぷつりと切れて。

カズマと本屋にいても、万里とドライブしていても、彬と街を歩いていても、チヒロとCDショップにいても、彼女の自由なのに。

 

「炎樹。もう収録は終わりよ。お疲れ様。帰って寝て、次は9時にドラマの撮影よ。」

「……。」

「炎樹。聞こえているの?明日は遅れないでね。最近遅刻が多いわよ。」

「…あ、ああ。分かってるよ。」

 

あの扉を抜けて、今すぐ追いかけてしまいたい。

追いかけて…追いかけて……俺は何をしたい?

…もうそんな権利、俺にありはしないのに。

 

(スカートイベント後)

 

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【炎樹×明里】

 

「明里さん、不肖の息子ですがどうぞよろしくお願いします。」

「結婚したからといって、変なことしたらすぐぶっ飛ばしていいからね。」

「明里さん。お兄ちゃんが浮気したらすぐ別れちゃっていいから。」

「でも別れてもうちには遊びに来て頂戴ね。」

「おお、そうだそうだ。遠慮せずに!もう娘になるんだからね。」

「は、はい。ありがとうございます。」

 

「……オイ。」

「何よ要。今明里さんと話してるのよ。」

「結婚報告に来てんのに、別れるとか言うんじゃねぇ!しかも俺に対する扱い酷くねぇ!?」

「だってお兄ちゃんより明里さんのほうが好きだし。」

「お前より明里さんのほうがかわいいし。」

座って早々机の向こう側に連れ去られた明里は要の父と母と妹に挟まれて座っている。

妹にいたってはべったりくっついている。

「明里さん、ご飯用意してるの。食べて行ってね。」

「おお。皆で結婚祝いにしようじゃないか。」

「明里さん、今日のご飯、私も作ったの。食べてね!」

「ありがとうございます。あ、あの要さんは…!」

 

自分のお嫁さんと家族が仲いいことはいいことだと思う。非常に。

けれど仲がよすぎるのはよくないかもしれないと、一人取り残されて要は思った。

 

 

(息子より大切にされる息子嫁明里。)

 

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【炎樹×明里&】

 

今日は久々に要さんが帰ってくる。

留守の間に二人で出演映画やドラマをたくさん見て、この人がパパだよって分かるようになった。

パパって言えるようにもなったのよ。

「パパもうすぐ帰ってくるからね〜。」

膝に乗せた息子に話しかけるときゃっきゃと笑った。

 

たっだいま!

すごい勢いでドアが開かれた。

玄関まで出迎えに行こうと思っていたのに、要さんはそれを待つどころじゃなかったらしい。

汗だくで、ぜぇぜぇと息を切らして。あまりに急いだせいか、服がすっごく乱れているのがなんだか必死で少しおかしかった。

「お帰りなさい!」

息子を膝から下ろして立ち上がる。

「ほら、パパ帰ってきたよ。パパだよ〜〜。」

もう歩けるようになった息子の背をそっと押した。

「おー!立ってる!!パパだぞー!ほら、こっちこっち。」

荷物を放り投げてばっと手を広げるのがまたおかしくて、今度は笑いを堪えられなかった。

でもそれすら気にならないくらいに、要さんは息子の様子をじっと見ていた。

「ほら。パパって言ってあげて。」

もう一度背を押して言ったけれど、あら?

とととっと私の後ろに回って隠れてしまった。それでも気にはなるようで、そっと顔を出しているけれど。

「ぬあー!まだ忘れられてるし!」

「あれー?どうしたの?ほら、パパだよー。テレビで見て分かるようになってたんだよ?パパって言えるようになってたし。」

このままだとまた仕事休むとか言い出しかねない。

前回、みっちり入っているスケジュールをキャンセルして休業するとかわめいたので、大変だった。

背中に張り付く息子に手を伸ばしてどうにか剥がそうとするけれどイヤイヤしていて動こうとしない。

「おかしいなあ。」

あんなに特訓したのに。

溜息をついて要さんの方を見ると、要さんはすでに拗ねモードに入っていて、床にのの字を大量に作り出していた。

まずい、まずいわ。うーんうーん……あ。

「もしかして。」

「何っ!何が原因なんだよ!」

上から下までじっと見て、顔を見た。

必死になってる顔がまたおかしかった。

「もしかしてテレビで見たパパと同じ人だと認識できてないのかも。ほら、そのかっことか、態度とか。」

「!そうか!」

 

同じだと認識できないとかどう考えても切ないことなのに、急いで洗面所に駆け込む後姿を見てかわいいなあなんて思ってしまった。

「もうすぐパパ来るからね〜。」

なんて言ってる私もやっぱり結構ひどいかもしれない。

 

 

(以前のミニネタ(炎樹1に収録)の続き。パパ頑張れ。)

 

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【炎樹×明里】

 

あなたがいない日には

今女の人と一緒だったりしないかしらとか

次のオフにはあそこへ行きたいだとか

恋愛映画なんてこの世からなくなってしまえばいいのにとか(要さんが出てないのはいいんだけど)

なんかそんなことを考えてしまったりする。

 

あなたがいる日には

ドキドキして顔を見られなかったりとか

どこへも行きたくないだとか

恋って愛ってなんて素晴らしいんだろうとか(ちょっと恥ずかしいけど)

なんかそんなことを考えてしまったりする。

 

なんかそんな毎日が、私には愛しくって切なくってどうしようもなくなってしまう。

ああ、やっぱりあなたのことが好きなんだなあ。

 

 

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【炎樹×明里】

 

「ねえ要さん。私のこと好きですか?」

「当然じゃねぇか。」

「どのくらい?好きのてっぺんですか?」

「あー、そうだな。頂上って感じだな。もうこれ以上ないっつーくらい。」

「じゃああとは落ちていくだけなんですね…。」

「!?ば、ばっかやろ!俺の頂上はいつまでも高くなり続けるんだっつーの!」

 

(飽和の「飽」が「飽きる」というのと同じ字だと気付いて、心も飽和したら飽きていくのかしら(←ネガティブすぎる)と思ってできた。)

 

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