【誰か×明里】(BAD後)
拝啓
こちらはまだ、つめたい雨が降り続いています。そちらはどうですか?もう雨はあがっていますか。それとももしかしたら、雨など最初から降らなかったのでしょうか。
けれどどんなにつめたい雨に打たれても、わたしは毎日朝が来れば目が覚めて、ご飯を食べて、月が昇れば眠って。そうして変わらず生きています。
二人過ごした日々を、覚えていますか。
まるできらきらと降り注ぐ木漏れ日のように。
時には強すぎる夏の日差しのように。
そして美しすぎて怖くなる真っ赤な夕日のように。
過ぎ去った日がいつか思い出になるのだとしても、心のやわらかな部分に焼きついたこの想いは、きっと色褪せることはないのでしょう。
……ほんとうは、苦しくて、寂しくて、どんなにもがいてもうまく深呼吸ができないから、あなたもそうであればいいと書こうと思っていたのに。
けれど、わたしが思い出すのは、あなたの笑顔ばかりです。
わたしの大好きな笑顔が、どうか曇ることのありませんように。
あなたのやさしい心が、どうか傷つきませんように。
あなたをずっと、大切に想っていられますように…。
……そう、願ってばかりいます。
かしこ
わたしの大好きな あなたへ
(09.07.19)
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【水無月×明里】
最近、増えたものがある。
ニキビ、ため息、目尻のしわ。
ううん、そんなんじゃない。
それはね、私の宝もの。
例えばホラ、覚えてる?
このプルタブ。
あなたと行った田舎の海の自販機で、出てきた懐かしい取り外し式の缶のプルタブ。
『懐かしいですねぇ』ってあなたが言うから、『おじさんくさーい』って言ったら帰りの車の中は、なんだか拗ねていたっけ。
それからこのひっつきむし。
あの子と河原に遊びに行って、あなたのセーターの裾にくっついていた、小さな小さな実。
離れたくないというように、セーターをほつれさせたそれが、まるであなたとずーっと一緒にいたい私のようで、こっそり取っておいた。
それからこのボタン。
店長を辞めるときに、どうしてもってもらったスーツのボタン。
だってなんだか悔しくて。
私と出会うまでのあなたの時間が私のものじゃなかったことが。
だから店長卒業記念の思い出としてこのボタンをもらった。
あなたといると、欲しくなる。思い出も時間も。
私ってこんなにワガママだったかしら。
でも、これからもずっと欲しい。あなたとのたくさんの思い出。
だからこっそり集めることを許してね。
他の誰にも分からなくても、これは私の宝ものだから。
随分増えたそれをそっとしまって、私を呼ぶ優しい声へと、続くドアを開けた。
(061128)日記ネタ再録
【(誰か×)明里+和希】
『あかりはおねえちゃんだから、かずきよりもおおきいんだよ!』
たった一人の姉が、自慢げにそう言っていたのは、いつのことだったろう。
小さい頃は同じだった、子ども部屋の柱。
部屋が分かれてからはつけなくなってしまったけれど、そこには無数の線が引かれていた。
『あかり10才 かずき7才』
年上ぶってあれこれ俺の世話を焼いていた頃もあった。
いつまでもぽややんとしているから、いつの間にか俺がフォローする立場になったけれど。
『明里16才 和希13才』
ほぼ同じところに線が引かれてある。
これが最後の線だった。
ようやく同じになった目線が、なんだか無性に嬉しかったのを覚えている。
この頃は、いつまでも俺の姉ちゃんなんだって思ってたっけ。
「和希ー!ねえねえ、おかしいとこないか見てー」
なのに、いつの間にか姉ちゃんは俺の目の届く範囲から出て行ってたんだな。
「おー、今行くって」
母さんが昔着たウエディングドレスを着て、明日姉ちゃんは結婚する。
…これからは、あの人に守ってもらうんだな。
最後に柱の傷をそっと撫でて、部屋を出た。
(07.02.26)
投票より「第3者視点+ED後」
明里のお相手は好きなキャラをご想像ください。
今胸キュンで和希攻略中です。感想→なんて素直で可愛い子なの!!素敵!
【チヒロVS炎樹】リクエスト企画作品
この数時間が憎らしい。
だって明里さんが違う男のものだから。
騙して、傷つけて、泣かせた男なのに、その男の傍で笑っているしかないなんて、永久指名なんてろくなものじゃないと思う。
大して仲がよさそうじゃなかったのに、明里さんが九神さんを永久指名したのが11月。
その前からずっと俺は見てた。明里さんだけ。だから知ってたんだ。九神さんの本当の気持ちだって。
見てれば分かる。だから許せなかった。明里さんの気持ちを利用する九神さんが。
そして明里さんを傷つけた九神さんが。
俺が必ず明里さんを幸せにする。
今頃気づいたってもう遅い。今頃そんな瞳で見つめたってもう遅い。
「…明里さん、時間。」
「あ、じゃあ失礼しますね九神さん。残りの収録がんばって下さい。」
「あ、明里…。」
九神さんが手を伸ばす前に、明里さんの手を取って歩き出す。
1分でも1秒でも早く俺の元に戻ってきて欲しい。
もう渡したりしない。好きなことを我慢したりしない。
「チヒロさん、時間教えてくれてありがとう。明日早くからバイトだから助かっちゃった。」
「……明里さん。」
「九神さん、最近なかなか話が途切れなくて…って、あ、はい、なあに?」
「明日、早いのに、ごめん。……だけど、どうしても聞いて欲しい話が、ある。」
「え…?」
「どうしても、今じゃないと、だめ。」
「…うん、分かったわ。」
必ず、幸せにする。
あの人みたいに泣かせたりしない。
明里さんと一緒なら、俺も幸せになれるんだ。
好きだ。好きです。愛してる。
溢れてくる気持ちを感じながら、もう一度明里さんの手を取った。
(06.11.8)
えりさんリクエスト
一度炎樹と別れてから、チヒロが事の顛末を知り、猛アタック。チヒロの勝ちで
【女性陣】
「ねえねえ明里ー。今度大学の先輩の知り合いと合コンあるんだけど行かない?」
「え?合コン?」
(((((合コン!?)))))
ザザザッという音と共に一斉に振り向いた。
「そそ。結構かっこいいらしいよー。ええっと、K大学なんだけど。」
「K大学と合コンですって?…私も行ってさしあげてもよくってよ?」
「…絢子、あんた誘ってないんだけど…。つーかどっからわいてきたの…。」
「なんですって?私が行ってさしあげると言っているのにその言い草!正気の沙汰とは思えませんわ!」
「…あー、はいはい。じゃあ来てくれてもいいよ。まあ人数まだ集まってなかったし。」
「なんですの?そのどっちでもいいみたいな言い方は!」
「ま、まあまあ二人とも…。」
「…もっと誠意ある頼み方をして欲しいですけど、まあ今回はよしとしますわ。」
「じゃあ明里と絢子決まりね。」
(((((決めるなよ!)))))
ガシャン!
「ああ、グラスが!手、手大丈夫ですか?」
「あ、写メ来た。この人たちだってさ。」
「へえ、一般人にしては結構かっこいいじゃありませんの。」
「だよね。ついに明里にも彼氏が出来るかもよ?」
(((((できんでいい!!)))))
このとき何人かは、立ち上る黒いオーラを見たのだった。
「ほらー、あんた素材はいいんだからさ。もっとお洒落にしたら絶対すぐ彼氏できるって。」
「えー…、そうかなぁ…。」
「そーだ!明日服買いに行こうよ、勝負服!ミニでさー、あんた胸もあるんだからもうちょっと露出してー。」
「冴えないあなたのために私がコーディネートして差し上げてもよくってよ。」
「えー!二人ともいいよ、そんなの!ミニなんて着れないし…!」
「ダメダメ、決定ー!じゃあ明日着杜駅前で待ち合わせね。」
「…ううー。もう…。」
「やー!楽しみだなー。絢子、すんごいの選ぼうね!」
「私が明里さんをプロデュースして差し上げますわ!」
(((((・・・・・・・断固阻止する!!)))))
『『『…あの日の店内は、生きた心地がしませんでした…。』』』とは、例の5人と同じテーブルにいた新人達の言葉である。
(みんな聞き耳たてまくりなのです。思わずグラスを握りつぶしてしまうくらい気になっているのでした。)
【誰か×明里&】
晴れた昼下がり。
よく陽の当たる窓際で、夫と子供達が寝ていた。
左腕には息子が。腹の上にはまだ赤子の娘が。
それはとても幸せで幸せすぎてなんだか苦しい。
「私もちょっと休ませてもらおうかしら。」
投げ出された空いてる右腕にそっと頭をのせた。
それはなんてことはない昼下がり。
【万里×明里&】
「パパ、パパ、あのね…」
最近息子は内緒話がお気に入りだ。
その内容は学校でプリン争奪戦に勝ったとか、帰り道でザリガニを見つけたとかそんなたわいもないことだけれど。
秘密を共有するということが、なんとなく誇らしくドキドキするのだろう。
「あいつ、ほんとに内緒話好きだよな。」
二人きりになった寝室で、祥行が言う。
「そうね。…ね、私もしていい?」
「二人っきりなのに?」
内緒話をする必要なんてないけれど、なんだかドキドキするから。
「あのね、…大好きよ?」
【彬×明里&】
我が道を突き進む仁にも一つだけ勝てないものがある。
「パパ、パパ。わたしみつあみできるようになったんだよ!」
愛娘には逆らえない夫は、一昨日はお団子、昨日はツインテール、今日はみつあみになっていた。
【和希+明里】
「和希ー!私のアイス食べたでしょ!」
「げ。ばれた。」
「やっぱあんただったのねー!もう、お風呂上りに食べようと思って楽しみにしてたのに…。
もうマンガ貸してやんないんだから!」
「え。ごめん!姉ちゃん、まじごめんって!」
「……ぷん!」
「えー…。もっかい買ってくるからさー。」
「……じゃああの店のプリン二個なら許す。」
「ええー!横暴!」
「じゃあ貸さない。ドラマも録画してあげない。」
「…買いに行かせていただきます。」
【(誰か×)明里&】
こちらの都合なんて関係なく泣くし、おむつ替えたと思ったらすぐにうんちするし、ホントにもう毎日が嵐のよう。
でも例え99%が大変なことだとしても、にこおっと笑うその笑顔を見た瞬間に苦労なんて吹っ飛んじゃうのは、
やっぱりその笑顔があの人に似ているからかしら。
もう。お母さんってすごいなあ。こんな気持ちになるなんて。
いとしくていとしくていとしくて しようがないの。
(最近赤ちゃんと接することが多いので。かわいくてしょうがないですよね。たぶん。)
【彬×明里】
「仁のバカッ!もうお嫁にいけない〜〜〜。」
「えっ。僕がもらえるんじゃなかったのかい!?」
なんて。
本気でどうしようって思ったのに、そんなこと言われたらもうどうでもよくなってしまうじゃない。
(一体何をしたのか。ただ二つ目のセリフを言わせたくて書いた作品。)
【万里×明里】
もうあの日からは1年が経ち、見えない生活にも慣れてきていた。部屋の中や近所は歩数で測ったり、周りの音を聞いたりすることでほぼ淀みなく歩くことが出来るようになった。
目が見えなくなった当初、明里と二人で歩いたたくさんの道。
マンションから出てすぐのところにあるお惣菜屋さんのコロッケの匂い。
そこのおばちゃんの声を聞いてすぐ右に曲がると頑固だけど本当は優しい親父が居るお蕎麦屋さん。
カラリと開くその扉の向こう側はかわいい女の子が生まれたばかりの小さな家。
通る度に一つ一つ細かく説明してくれた明里の声を思い出す。
「今ベルが聞こえたお店はほら、祥行さんと一緒に行った喫茶店。祥行さんたらいつまでたっても注文決まらないから私が変わりに注文したわよね。それからここの段差のすぐ右側は二人で散歩した公園よ。並んでブランコに座ったわよね。」
どこもかしこも思い出で溢れている。太陽の下で輝くような彼女の笑顔を見たことを、昨日のことのように思い出せる。
もう一度、本当に目が見えるようになったら、君を連れて行きたい。
まだ行ってなかった秘密の高台にも。
掴めそうなくらいに近い星空が広がる高原にも。
青と橙が混じり合う夕暮れにも。
君がいるから。だからきっと世界はこんなに光に溢れてるんだ。
目は見えないのに、明るいのはきっと。