緋色の欠片

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新しいものはキャラごとに上に追加していきます。
主人公は公式の春日珠紀で統一。

鬼崎拓磨

10

鴉鳥真弘

2

オールキャラ・その他

2

 

 


【拓磨×珠紀】リクエスト企画作品

「…なあ。」
「ん?」
「ずっと前から思ってたんだけどな。」
「うん。」
「…何っで新婚家庭なのに、真ん中にオサキ狐が寝てるんだよ!」

この春に晴れて結婚した二人。
いってきますのキス、おかえりの声、二人きりの夜。
拓磨は一緒にいられる幸せをかみ締めていた。
珠紀は妻として申し分なかった。
朝もきちんと起きる。料理だってうまいし、家事は得意。
蜜月というのは恐ろしいもので、何をやっていても愛しく思える。
けれどひとつ、ひとつだけ、不満があった。
それが、この

「おい、オサキ狐、お前も遠慮しろよ!」
「ニー!!」

毛を逆立てて威嚇してくるオサキ狐とにらみ合う。
「もう、拓磨もおーちゃんも仲良くしてよー。」
「お前な…。」
彼女がオサキ狐を大切に思っていることは分かっているし、戦いの時に守ってくれた大切な仲間だ。
けれど。
「夜くらいお前と二人きりで寝たいと思っちゃダメなのか?
本当は風呂だって俺が一緒に入りたいと思ってるし、新婚なんだから二人きりで暮らしたいんだ。
けどお前がこいつのことを大切な家族だと思ってることも知ってる。
だから俺も譲歩してるんだ。
夜くらい、少しくらいお前のことを独占したいと思うのは、俺の我が侭なのか?」
「拓磨……。」

「ニ」

「あ、おーちゃん…。」
オサキ狐は短く鳴いて、珠紀の影に消えた。
「気を利かせてくれたんだね…。ありがと、おーちゃん。」
消えていった方向を見つめて、珠紀が呟いた。
そして俺のほうに向き直る。
「拓磨、今までごめんね。
私も拓磨のこと大好きだし、結婚できてすごくすごく幸せ。
私、付き合ったのも拓磨が初めてで、こうして一緒に暮らすのだって初めてだから
気が利かないこと、これからもたくさんあるかもしれない。」
そこまで聞いて俺は、今まで思うばかりでちっとも伝えていなかったことに気がついた。
「でも、ずっと一緒にいたい。
…拓磨、ずっと私といてくれる?」
目を見て、言ってくれる。
俺だけが想っているわけじゃない。
気持ちはもしかしたら俺のほうがずっと大きいかもしれない。
けれど

「もちろん、ずっと一緒だ。病めるときも健やかなる時も、死が俺たちを別つまで。
いや、もし死んだとしても、…きっとずっと来世まで。」
「うん、うん拓磨…!」

ずっとずっとこいつと一緒にいよう。いつまでも俺が守ってやろう。
そう、二人抱き合って眠りに落ちながら、誓った。

(06.11.8)

蒼さんリクエスト
ED後で拓磨が誰かに(何かに)嫉妬。最終的に甘々


【拓磨×珠紀】過去拍手お礼

「…なんだよ。嬉しそうだな。何かいいことあったのか?」
「…ん?んーん。別に特に何も。」
「の割りにはさっきから鼻歌歌ってスキップしそうな勢いだぜ?」
「ん?うーん。……してもいいかも。」
「…そんな怪しいやつの隣は俺歩かないから。」
「なー!怪しいやつって何よ!ただ私はねー!」
「あーはいはい。…帰るぞ。」

私が機嫌いい理由なんて一つしかない。

    (いつだって、あなたがいるだけで)


【拓磨×珠紀】過去拍手お礼

人間、切羽詰っていると何でもできるってことがホントによく分かった。
なんであの時は恥ずかしげもなくあんなことやこんなことができたのか。
とてもじゃないが、今もう一度やれといわれてもできやしない。
俺は日本男児なんだぞ!?
そんなに好き…だとかキス…だとかできるわけないだろう!
「拓磨がしてくれないんだったら…」
な、なんだよ!浮気とか…する気か?それは絶対、絶対ダメだ。
かといって俺からそんなに…できないし。
「私からしちゃうんだから!」
……は?

というわけで今ではすっかり手綱を握られ、あんなことやこんなことされまくりです。
日本男児としてちょっと情けないけれど、とても満足しているのでこれでいいと思うことにしました。


【拓磨×珠紀】

消しゴムを忘れた日。

いつもなら、何度も何度も貸してもらってもいい?なんて聞くのが申し訳なくて、できるだけ、集中して間違いのないように気をつける。

でも。

「また消しゴム借りるねっ。」
「お前な…。少しは間違えないように気をつけろよ。」
それは拓磨が悪いんだよ。
こんなに私を好きにならせたのがいけないんだよ?
消しゴムを借りるのだってなんだか特別に思えちゃうくらいに。

(07.02.02)


【拓磨×珠紀】

「…っん、」

彼は自分からはほとんど仕掛けてこないくせに、いざこちらから仕掛けた時には、なかなか離してくれない。
…それが分かっていて、私もやるのだけれど。

「…は」

呼吸のために少し離れた隙に薄く目を開けると、彼と目が合って(鼻先が触れ合う距離にいるのだから、当然か)、彼の目の奥に欲情が見てとれた。ああ、まだ終わってないんだと思った。
そうして2度大きく息をすると、その開いた唇から、もう一度彼の舌が滑りこんできた。

深く深く、境界線が無くなるくらいまで近づきたい。
もう決して離れられないように。

夕暮れの帰り道で、誰かに見られやしないかとドキドキしながら、それでも彼の首に回した腕を緩めることはなかった。

(06.12.21)


【拓磨×珠紀】

携帯が無くて不便だと今ほど思ったことはない。

両親の説得のために戻ってきて2週間。
その間もちろん村には帰れていないし、拓磨にも会っていない。
覚悟して帰ってきたのだからそれくらい我慢できると思っていた。
しかし自分が思っていた以上にどうしようもなく切なくて愛しくてじっとしていられなくなってしまった。
「遠恋の人って大変なんだなあ…。」
受話器を握り締めて呟く。
携帯がないせいで電話も満足にかけられない。
必然的に家にかけることになるので1日に何度もかけられないし、メールだってできない。
「あうー…。」
意味不明なうなり声を上げながら、もう覚えてしまった番号をプッシュする。

プルルルル…。
もう呼び出し音さえ待ち遠しい。
ドキドキしながらベッドにダイブして声が聞こえるのを待つ。

「はい、鬼崎です。」
「もしもし、珠紀です。」
「そろそろだと思ってたよ。」
「拓磨も待っててくれた?たまにはそっちからもかけてよー。」
「バカ。こないだやったら親父さんが出て大変だったの忘れたのか?」
「あはは。『お前がうちの娘をたぶらかした男かー!』とか言ってたね。」
「ったく…。」
「…会いたいよ、拓磨。」
「…バーカ。」
「む。バカとは何よー。」
「…俺もだ。早く会いたい。早く帰って来い」

話せば話すだけ恋しくなって。
「うん。帰ったら一緒に登下校しようね。」
会えなければ会えないだけ愛しさが募る。
「ああ。」
彼も同じようにドキドキしてくれているんだろうか。
「大好きだよ、拓磨。」
いつもより素直になれる電話越しであなたに伝えたい。
溢れそうな、ううん、もう溢れてしまっているこの気持ちを。

(06.08.28)

お互い大好きで珠紀は拓磨に甘え、拓磨はデロデロに甘やかすというのがうちの拓磨×珠紀のスタイルのようです。


【拓磨×珠紀】(悲恋ED)

遥かに広がる青空。
秋になり、空は高くなり、青が一層澄み渡る。
この空の下では何十万、何十億という人々が暮らしていて。幸せでも苦しくても、生きている。
でも。

「拓磨…。」

あなたはいない。
いってしまった。私を置いて。

幸せになりたかった。一緒に。
戦いなどない平和な世になったら、一緒に帰ったり、手を繋いだり、お弁当を食べたり。
ときにはキスしたり、デートしたり。
特別じゃなくていい。ただあなたがいてくれればそれでよかった。

でももうこの空の下、どこを探してもあなたはいない。

「      」

呟きは、風に溶けて消えた。

(06.08.27)


【拓磨】

いつも前にいたから気付かなかった。彼女の背がこんなにも細いことに。背にかばわれて初めて分かった。震える膝。広げた腕。絹糸のような髪の毛は、風に揺れている。
戦いによる砂埃で服も顔も髪も汚れていたけれど、それでも彼女は美しかった。自分が今までに見た誰よりも。

守りたい。守護者としてではなく自分の意思でそう思った。
けれどその力の無い自分が。逃がしてやることも、まして助けることなどけしてできない自分が。

彼女の背を見ながら、自分の死よりも彼女の死を恐れた。

(06.08.27)


【拓磨×珠紀】

ー拓磨Sideー

もう2時間も前から待っている。大体この村へのバスなど、時刻設定があってないようなものなのだ。
今日は珠紀がこの村に帰ってくる日だ。帰ることが決まったと聞いてから、この日をまさに指折り数えて待っていた。まさか自分がこのような甘い考えができるとは、拓磨自身も思わなかった。

ぶるり。風が吹き抜け体温を奪っていく。秋も終わりに近づき、風は冷気を孕んでいる。1時間前でよかったか…。それでも早く、早くと急かす心に逆らえず、この何もないバス停で待ち続けている。

「あいつを待つ時間なら、悪くない…か。」
らしくないと思いながらも呟いて、彼はいつ来るとも知れないバスを待つ。

ー珠紀Side−

「ねえねえ、着いたらぜーったい紹介してよね!」
「まさかちょっとおばあちゃんちに行っている間に彼氏ができるなんて思わなかったよ!しかも結局ずっとこっちにいるとか言い出すし。」
「よっぽどいい男ぞろいなんだねー。楽しみ楽しみ。」

「もうみんな!ついてくるのはいいけど変なこと吹き込んだりしないでよね。」

「変なことって?例えば珠紀は純粋培養箱入り娘で男女のなんたるかも知らないとか?」
「初めては優しくリードしてあげてくださいねとか?」

「そういうこといっちゃダメー!」

「あはは。冗談冗談。」
怒りながらもそわそわしっぱなしの珠紀を見て、かつての級友達はひそやかに目元を緩ませた。

「そ、それから他の人は…まだいいけど、拓磨は絶対ダメだからね!わ、私の彼氏だから!」

「はいはい。」
この友人は純粋で優しすぎる。初めて付き合う男が信頼に足るのかどうか。私たちで見極めようと遥々やってきたのだ。
「他の人にも紹介よろしくね。」
…まあ半分以上は男前揃いだという友人達を見に来たのだが。

再会まで、あと少し。

(06.08.27)


【拓磨×珠紀】

「…おい。どうしたんだ今日は。」
いつもどうしてそんなに話題があるのかと思うほどに尽きることなく話す珠紀が、今日は大人しい。学校を出てから押し黙ったまま拓磨の右横を歩いている。特に機嫌を損ねることをした覚えはないし、昼休みも授業中も特にそんな様子は無かった。10分ほど歩いてさすがに心配になってきた拓磨はようやく声を掛けた。

「おい、珠紀…?」
それにすら返答が無く、ますます心配になった拓磨が覗き込もうとしたときだった。

ぐいっ。

ごちん。

「いてっ。」
「あ、し、失敗しちゃった…。」
口元を押さえてようやく喋った言葉はそれだった。

「た、拓磨が悪いんだからね!何にもしてくれないから!わわ、わたし先帰る!」
それだけ言い残して脱兎のごとく駆けていってしまった。

「…欲求不満だったのか…?」
真っ赤になった顔を手で押さえて、珠紀が駆け去った方向を見ながら拓磨は呟いた。
とりあえず。
「……もう我慢しないことにしよう。」

(06.08.27)



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【真弘×珠紀】過去拍手お礼

運命は決まっている。
俺が生まれたときから。
けど誰しも皆死ぬんだ。俺は少し早いだけ。
皆死ぬのに恋をするんだ、愛するんだ。

だったら俺だって

     (―――少しくらい、愛しても?)


【真弘×珠紀】

手を繋ぐ時。先輩はけして隣を歩かない。
最初それが不満で早足で歩いてみたりしたけれど、その分先輩も早足で歩こうとするから競歩みたいになってしまった。
そしてなんだかばかばかしくなって二人で笑った。

でもね。
先輩、なぜだか知ってるよ。
言わなくても、隣を歩かない理由、私知ってるよ。
ほら、夕焼けよりも茜色に染まる左耳が、私に教えてくれるの。

(06.08.27)



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【誰か×珠紀】

夕暮れに染まる道を歩く。
二人とりとめもなく話しながら。
こんななんでもない帰り道が幸せなんだと、ずっと知らなかった。
赤と紫が入り混じる空、揺れる木立、自由を求める蜻蛉、オレンジに染まるあなたと私。

「じゃ、また明日。」
そう言って帰っていくあなたの背を見て思う。
ほんとうに明日会える?
必ず、約束だよ。

「うん、また明日。」

明日はいつも揺らいでいる。不確かなそれを掴むことがこんなに難しいなんて。
明日が来るというたったそれだけのことが、奇跡だと知った。

(06.08.28)


【オールキャラ】

ようやく戦いの日々が終わりを迎えた。
とても敵わないと思っていた敵を討ち、過ごすことなどないと思っていた本当の平和を手に入れた。

…そう思っていた。

「このような時分に珠紀さまに、何の御用でしょうか?」

…しかしラスボスは別にいたのである。
口元は笑みを浮かべながらも全く笑っていない目が恐ろしい。
言葉こそ穏やかだがその口調は全てのものを凍らせるであろう威力を持って放たれた。

「あ、いや、そのな…」

「特に御用が無いのでしたら、今日はもう遅いですしお引き取りくださいませ。」

「いや、でもな…」

「話せない。家に帰る。」

言霊発動。

「それではおやすみなさいませ。」

がくり。
項垂れながらも言霊には逆らえず、とぼとぼと家に向かって歩く。
全員が返り討ちにあっていた。
戦いが終わったとき、今度は珠紀をめぐる戦いに勝たねばならぬと思ったのは全員同じだったが、思わぬところにボスがいたのだ。
これまでの日々ですっかり珠紀に懐いてしまった美鶴はだれよりも恐ろしい存在となってしまった。
しかも戦いの後いついてしまったアリアまでもが一緒になって邪魔をしてくるという有様だ。

「ハア…。こんなことなら最初に憎まれ口ばっか叩くんじゃなくてとっととモノにしておけばよかった…。」

ラスボス戦からの帰り道、そうして呟くのは彼だけではなかった。

(06.08.28)



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